小雪|最近の小話

こんにちは。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
看護師の長澤です。

先日、ご利用者様から「訪問リハビリと看護はね、僕の大切なボウセイテンケンなの。老朽化した僕の体をいつも整備してくれてありがとう」とのお言葉を頂きました。

「ボウセイテンケン」という聞き慣れない言葉に戸惑いながらもお話を伺うと、言葉通り錆び防止のための点検で、自動車や航空機などの乗り物に行う点検の一つで、漢字では「防錆点検」と書くようです。

自分の体を老朽化した機械になぞらえながら、その方は海軍の事情に詳しい方で、海軍における防錆点検を僕に教えてくれました。

海軍の有する空母という船には有事の際に出動するための戦闘機やドローンなどの航空機がいくつも積まれており、それらの航空機は有事の際に飛び立てるように点検で常に備えているようなのです。

海軍の有する多様な航空機の中でもヘリコプターは、使用するとプロペラの風圧で海の水を巻き上げながら飛行し、大量の海水の飛沫にさらされます。

普段船の上で格納されているときにも海の潮風や高波によって海水まみれになってしまうようで、常に海水の影響を受け続けます。


 
海水でベタついたヘリコプターの整備をせずそのままにしておくと、すぐに金属の機体は錆びを生じて腐食していきます。そのため空母の航空機にとって付着した海水を取り除く防錆点検は欠かせないケアのひとつなのだといいます。

空母の船員たちは海水による腐食を防ぐために、機体を洗浄することが日課となっているのです。

3人1組で海水まみれのヘリコプターをひと通り綺麗にしたら、しっかりと洗浄ができたかを確認するため、プロペラを一人一枚ずつ手で持ってゆっくりと回していきます。

回していく中で洗浄具合の確認だけでなくプロペラのひっかかりだったり、亀裂などの破損がないかを見ていき、異変を感じたら追加で洗浄を行ったり、部品を交換したり。グリスなどの潤滑剤は時間を経ると蒸発していたり、グリス自体の粘度も気温によって変動するようで、柔らかすぎず固すぎずの状態を保てるように調整を行なっていくそうです。

海軍の防錆点検では機体に付いた海水を洗浄するだけでなく、気温や天候にさらされた機体の状態を読み取り、調整を施していくことも点検の大事な目的のひとつだというのです。

血の通った仕事はAIには出来ない事

現代の技術を持ってすれば、機械で簡単に一括整備できそうなものですが、今でも人の感覚を大切に防錆点検が行なわれているのです。

手作業で調整していくことで数値で図りようのない異常や異変をキャッチしたり、より微細な異変をキャッチして整備することができるのだそうです。

非効率的ではあってもデータや数値には現れない小さな変化を受け取り、対応していくことができるのは機械などではなく人間の五感というセンサーだけが成せる技なのかもしれません。

あらゆるデータが機械や検査でわかったり、AIという技術が出てきて人の代わりを果たすような時代だからこそ、反対に自分の感覚器官を使って対象の小さな異変をキャッチし、そのたびに整えようとする海軍の船員たちの姿勢は、僕ら看護師にも通じてくる部分があると思いました。

A Iには代替不可能な形でのありようとはを考えながらケアを提供していきたいものです。

今後も皆様の穏やかで豊かな生活のために血の通った防錆点検に努めていきたいと思います。

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